TH

NOTES

ジャズサンバ研究所 ②ジャズサンバスタンダード

ジャズサンバでよく演奏される楽曲リストです。自分の所有するCDの範囲内で整理しています。Jazz Sambistas(ジャズ・サンビスタス)で演奏したことがある曲は長めの解説がついています。(2012年8月30日時点)

A

A Felicidade

ブラジルもの映画の金字塔『黒いオルフェ』のオープニングを飾ることもあってか、いかにもボサノヴァといった雰囲気をもった楽曲。ジャズサンバではBwana Trioが録音を残している。

A Morte De Um Deus De Sol

Roberto Menescal(ホベルト・メネスカル)&Ronaldo Bôscori(ホナルド・ボースコリ)というボサノヴァ界きっての伊達男2人によるワルツ。Menescal自身のコンボをはじめ、Sansa Trio、Trio 3-D、Tamba Trio等が取り上げている。通常、ハチロク(6/8拍子)的なジャズワルツで演奏されることから、個人的な印象ではあるもののメロディに「Nanã(ナナン)」にも通じる一種の土着性があるような気がする。曲名は、日本語に訳すと「塩の神の死」。なんのこっちゃ?

A Resposta

「Samba De Verão(サマー・サンバ)」、「Butucada Surgiu(バトゥカーダ・スルジウ)」、「Gente(ジェンチ)」、「Seu Encanto(セウ・エンカント)」、「Deus Brasileiro(デウス・ブラジレイロ)」、「Preciso Aprendar A Ser Só(ひとりでいることを学ばなくちゃ)」等々、数多くの名曲を量産したブラジルきってのメロディメーカー、Marcos Valle(マルコス・ヴァーリ)のペンによるボッサスタンダード。英題は「The Answer」。Milton Banana Trio(ミルトン・バナナ・トリオ)の演奏はイントロに「ハチロク」と呼ばれるリズムを用いたトリッキーなアレンジ。どんな曲でもブラジル音楽らしく16分音符主体で表記することに腐心する本間氏は6/16拍子というわけのわからぬ拍子記号を目の当たりにし、大いにげんなりしたという。(3/8拍子という表記の方が一般的か。)

Adriana

5拍子による珍しい楽曲。Wanda Sá(ワンダー・サー)のデビューアルバムの一曲目を飾る。拍子が同じことからアメリカ人ジャズピアニストDave Brubeckによる有名なジャズスタンダード「Take Five」のイントロ箇所がそのまま借用されることも多い。

Águas De Beber

英題’Drinking Water’。邦題「おいしい水」。Astrud Gilbertoのデビュー作のタイトルトラックとして有名なボッサスタンダードであるが、ジャズサンバではそれほど演奏されない。

Águas De Março

邦題「三月の水」。João Gilbertoの弾き語りやElis ReginaとTom Jobimのデュオで大変人気のあるボッサスタンダード。1970年以降に発表された為ジャズサンバで取り上げられることはなかった。

Aleluia

Edu Lobo作曲のジャズサンバスタンダード。Sambrasa Trioの演奏が熱い。Roberto Menescalは軽やかに。

Alegria De Viver

邦題は「生きるよろこび」。Tamba Trio(タンバ・トリオ)のリーダー/ピアニストであるLuiz EÇa(ルイス・エサ)によるオリジナル。16歳の時にブラジル政府の給費留学生として2年間ウィーンの音楽学院に留学した経歴を持つだけあって、一曲の中に同じコード進行の繰り返しが一度も出てこないという、いろんな意味で恐るべき楽曲。それでいて、そんな裏事情を微塵も感じさせないメロディラインをもっているから手に負えない(いろんな意味で!)。1962年発表のTamba Trioの第一作に収録されている。

Amanhã

『Perry Ribeiro + Bossa Três』のオープニングを飾る小粋な曲。

Arrastão

Edu Lobo作曲のジャズサンバスタンダード。日本語で「地引き網」。2拍3連で下降していくサビのメロディが印象的。第1回ブラジリアンポピュラーミュージックフェスティバルでElis Reginaがこれを歌い優勝し、ブレイクするきっかけとなった楽曲でもある。

Aruanda

ボサノヴァというキーワードを考えたといわれているCarlos Lyra(カルロス・リラ)が作曲した可愛らしい小曲。後に渡米しジャズピアニスト、Chick CoreaのReturn To Foreverに加入してフュージョンの黎明期を支えることになるパーカッショニスト、Airto Moreira(アイルト・モレイラ)が渡米する前に在籍したSansa Trioでこの曲の録音を残している。ボサノヴァドラミングの第一人者Milton Banana(ミウトン・バナナ)のリーダー作にも快演あり。

B

Balanço Zona Suí

邦題「山の手のサンバ」。ヴォーカリストTito Madi自身が作曲した彼の代表曲。Bossa Jazz Trioは緩急をつけたリズムチェンジでドラマチックな仕上がり。

Baiãozinho

歌ものではDoris MonteiroとWalter Wanderleyがしっとりと、インストものではSambossa 5がアッパーな感じで録音している。ボーンボーンボーンボーンというキメの箇所がやけに耳に残る。

Batida Diferente

作曲は「Estamos Aí(エスタモス・アイ)」、「Chuva(シューヴァ)」、「Clouds」など数々のジャズサンバスタンダードを生み出したDurval Ferreira(ドゥルヴァウ・フェレイラ)とMaurício Einhorn(マウリシオ・エイニョルン)のジャズヲタクコンビ。Durval Ferreiraは米国アルトサックス奏者、Cannonball Adderleyの残した超名盤『Cannonball’s Bossa Nova』のセッションにもギタリストとして参加している。この歴史的な名演の影響からかジャズサンバ奏者にはすこぶる受けが良く、Sergio Mendes(セルジオ・メンデス)、Manfredo Fest(マンフレッド・フェスト)、Roberto Menescal(ホベルト・メネスカル)等も取り上げている人気曲。個人的にはこの曲を聴くと夏を感じる。

Batucada Surgiu

ブラジルが誇るメロディメーカー、Marcos Valle(マルコス・ヴァーリ)が作曲したボッサスタンダード。自身のリーダー作『O Compositor E O Cantor』はボサノヴァの名盤として紹介されることの多い作品であるが、ジャズサンバ最盛期である1965年に制作されただけあって伴奏はまったく隙のないジャズサンバ。作者自身と当時の奥さんによるデュエット録音で若き日のエウミール・デオダートがアレンジを担当した『Samba ’68』も捨てがたい名演。セルジオ・メンデス&ブラジル ’66の『Look Around』には「The Beat」という英題で収録されている。

Berimbau

ギタリストBaden Powell作曲によるアフロサンバ。’Consolação’とともにジャズサンビスタに取り上げられる頻度が極めて高い楽曲である。

Blusa Vermelha

Antonio Carlos Jobim(アントニオ・カルロス・ジョビン)がアメリカのCTI レーベルに残した大名盤『Wave』(邦題『波』)に収録されている爽快なボッサナンバー。曲名を日本語にすると「赤いブラウス」。ジャズサンバというムーヴメントは1964~66年頃に隆盛した事、当時ジョビンは米国を中心に活動していた事が重なり、このアルバムの曲がジャズサンバシーンで取り上げられることはついぞなかったが、あと数年早く発表されていたら多くのミュージシャンが録音を残していたであろうことは想像に難くない。これほどの美しい曲を立て続けに作曲したジョビンの才能には驚嘆より他ない。

Bossa Só

Johnny Alf作曲。Sansa Trioなどが演奏。

C

Call Me

ボッサスタンダード。Astrud GilbertoとWalter Wanderleyによる演奏が良い感じ。

Canto De Ossanha

邦題「オッサーニャの歌」。ギタリスト、Baden Powell(バーデン・パウエル)が作曲したアフロサンバ。ブラジルの歌姫Elis Regina(エリス・レジーナ)の愛唱曲として知られているが、ジャズサンバのミュージシャンたちもよく取り上げる。短調主体のAメロから長調主体のサビにかけての転調部分がキモ。この曲を何故か米国のアルトサックス奏者、Phil Woodsが取り上げているのだが、その演奏を聴いていたジャズアルトプレイヤーD氏が「かんと・で・おっさんは」「おっさんは」と無邪気に連呼されていたかの日が懐かしい。ポルトガル語では「nh+母音」で「ニャ行」になるんだニャ。

Carolina

「カロリーナ/お前の瞳の奥底には/世界中の痛みがしまってある/私はお前にもう説明した/それじゃダメだと/お前の嘆きはなにも助けはしない/私はもう踊ろうと誘った/役立つ時だと私はわかっていたから/愛する人よ/外の薔薇が咲いた/皆サンバを踊った/星がひとつ流れた/窓から微笑むことが/どんなに美しいかを私は見せた/だけどカロリーナは見なかった」ブラジルを代表するシンガーソングライターのひとり、Chico Buarque(シコ・ブアルキ)による作詞作曲。Zimbo Trio(ジンボ・トリオ)を従えたElizeth Cardoso(エリゼッチ・カルドーゾ)のヴォーカルが心に沁み入る。Mário Castro Neves(マリオ・カストロ・ネヴィス)はSergio Mendes & Brasil ’66ばりのお洒落なアレンジで、これはこれで心地良い。Chico Buarque本人の演奏は三作目に収録されている。

Céu E Mar

Johnny Alf作曲。Bossa Três、Trio 3-Dなどが演奏。

Chega De Saudade

ボサノヴァ誕生の契機となった歴史的な名曲。全体の尺が長いためジャズサンバではあまり演奏されることがないが、アメリカのジャズメンからは圧倒的な支持を得ている。英題は’No More Blues’。

Chuva

Durvel Ferreira作曲の美バラード。英題は’Rain’でジャズでも取り上げられることがある。

Cidade Vazia

ブラジルの名ギタリスト、Baden Powell(バーデン・パウエル)とLula Freire(ルラ・フレイリ)なる人物が共作したハードなアフロサンバチューン。前半が短調、後半から長調に転調する構造はBadenの作曲によくみられるものであるが、その中にあってもコード進行がよく練られているという点で一連のアフロサンバとは一線を期す。ジャズサンバではあまり取り上げられることが多くはなく、Som Trés(ソン・トレス)、Milton Banana Trio(ミウトン・バナナ・トリオ)とTema Trés(テーマ・トレス)、ストリングスを加えたZimbo Trio(ジンボ・トリオ)らによる演奏を数えるのみであるが、ことごとく名演である。

Clouds

Cannonball Adderleyの『Cannonball’s Bossa Nova』のオープニングを飾る楽曲。サウダージ感がほのかに漂う名曲。同作でギターを弾いているDurvel Ferreiraの自作曲。

Consolação

読めません、普通。ポルトガル語では「ç」は「サ行」。「a」の上にニョロっとしたやつがつくと「ã」単体で「アン」、「ão」のようにoを伴うと「アォン」。したがって、「Consolação」を無理矢理カタカナ表記すると「コンソラサォン」になるわけですナ。邦題は「慰め」。「Cidade Vazia」同様、ギタリスト、Baden Powell(バーデン・パウエル)が作曲したアフロサンバ。例の如く、前半短調、後半長調という構成になっている。ただしこの曲はジャズサンビスタに取り上げられる頻度が極めて高い代表的な楽曲として名高い。

Corcovado

有名なボッサスタンダードであるが、ジャズサンバではそれほど演奏されない。Cannonball Adderleyの『Cannonball’s Bossa Nova』が代表的。

Corrida De Jangada

Elis Reginaの歌ものがとにかく有名。ジャズサンバではBwana Trio(ブワナ・トリオ)が演奏している。

D

Deixa

ギタリスト、Baden Powell(バーデン・パウエル)と詩人Vinicius De Moraes(ヴィニシウス・ヂ・モラエス)による共作のマイナー調ジャズサンバ。邦題は「放っておいて」。ブラジルが誇る女性ヴォーカリスト、Elis Regina(エリス・レジーナ)によって取り上げられたことで広く知られていおり、その時バックを務めたBossa Jazz Trio(ボッサ・ジャズ・トレス)やSambalanÇo Trio(サンバランソ・トリオ)も熱い録音を残している。SambalanÇo TrioのピアニストCésar Camargo Mariano(セザール・カマルゴ・マリアーノ)は後にElis Reginaと結婚をすることになるが、この「Deixa」が二人の仲を取り持ったなんて逸話は、もちろん存在しない。

Desafinado

英題、’Off Key’。「調子外れ」とか「音痴」とかそんな意味。私の~歌~外れて~る~。Aメロの最初8小節においてはコードに対する増5度(または♭13th)音程でDesafinado感を表現している。その上、メロディはシンコペーション/アンティシペーションのオンパレードでことごとく裏拍で発音されるため、とても音痴では歌えない。Stan GetzとCharlie Byrdによる演奏がとても有名。その他、Quincy Jonesの『Big Band Bossa Nova』等ジャズ繋がりの名演が多い。全体の尺が長いため(1コーラス60小節)ジャズサンバではあまり演奏されないが、Rio 65 Trio(ヒオ・セセンタ・イ・シンコ・トリオ)が熱のこもった演奏を残している。

Deus Brasileiro

Marcos Valle作曲による爽やかなボッサスタンダード。

Disa

Johnny Alf作曲。Bossa Jazz Trio、Sansa Trioが演奏している。

Diz Que Fui Por Aí

邦題「出かけたと言ってくれ」。歌ものではNara Leão、Ana Lúcia、Doris Monteiro。インストものではMeirelles E Os Copa 5、Zimbo Trio、Dom Um Romão、Eumir Deodatoなどが演奏。

Dois Peixinhos

歌ものではWalter Wanderleyと組んだDoris Monteiro、インストではAirto Moreira擁するSansa Trioが演奏を残している。

E

E Vem O Sol

歌ものではDoris MonteiroがWalter Wanderleyと録音している。

Ela É Carioca

邦題「彼女はカリオカ」。有名なボッサスタンダードであるが、やはりジャズサンバではそれほど演奏されない。
邦題「彼女はカリオカ」。Antonio Carlos Jobim(アントニオ・カルロス・ジョビン)が作曲しVinicius De Moraes(ヴィニシウス・ヂ・モラエス)が作詞した有名なボッサスタンダード。ジャズサンバではそれほど演奏されているとはいえず、Milton Banana Trio(ミウトン・バナナ・トリオ)、Sergio Mendes & Bossa Rio(セルジオ・メンデス&ボッサ・リオ)、Hector Costita(エクトル・コスティータ)、Meirelles & Coppa 5(メイレウレス&コッパ・シンコ)らの演奏を数えるのみである。ただし、今やブラジル音楽会の大御所となったEumir Deodato(エウミール・デオダート)はこの曲がお気に入りだったとみえ、1964年の一年間で(本間氏が把握している限りでも)3回は自己のリーダー作に吹き込んでいる。

Ela Vai, Ela Vem

Jongo Trioが元気なコーラス入りで録音。純粋なインストではSanbossa 5がホットな演奏を残している。

Embalo

Tenório Jr.によるリーダー作のオープニングを飾る楽曲。

Estamos Aí

邦題「僕らはここにいる」。Durval Ferreira(ドゥルヴァウ・フェレイラ)とMaurício Einhorn(マウリシオ・エイニョルン)、Regina Werneck(へジーナ・ウェルネッキ)による楽曲。ジャズ系ヴォーカリスト、Leny Andrade(レニー・アンドラーヂ)の十八番とも言えるジャズサンバのスタンダード。この曲でLeny Andradeはとんでもないテンポによる鬼のようなスキャットを披露し一躍スターダムに上り詰めたという。Sambalanço Trio(サンバランソ・トリオ)、Manfredo Fest Trio(マンフレッド・フェスト・トリオ)、Raul De Souza(ハウルジーニョ)、Milton Banana Trio(ミウトン・バナナ・トリオ)など熱い演奏が多く、個人にはこの曲が収録されている作品にはハズレがないくらいに認識している。

Estrade Do Sol

『Dez Anos Depois』でのNara Leãoはしっとり歌う。

Eu E A Brisa

ボサノバの先駆者、Johny Alf(ジョニー・アルフ)が1967~68年頃にヒットさせたバラードナンバー。邦題は「私とそよ風」。後にAzymuth(アジムス)を結成することになるピアニスト、José Roberto Bertrami(ジョゼー・ホベルト・ベルトラミ)が、同バンド結成前夜に残したProjeto III(プロジェート・トレス?読み方不明)の作品に収録されている演奏がなかなかのもの。ブレジルの若手ピアニスト、David Feldman(ダヴィヂ・フェルドマン)のリーダー作ではコンテンポラリー・ジャズ的なアプローチでボサノヴァの古典に新風を注ぎ込む。

F

Fim De Semana Em Eldorado

ボサノヴァの先駆者、Johnny Alf作曲。邦題は「エルドラードでの週末」。原曲は「アルフ節」とでもいうべきアクの強い歌ものであったが、Tenório Jr.(テノーリオ・ジュニオール)がトリオで録音したことによってジャズサンバを代表する名曲として今日まで親しまれることになった。一度聴いたら絶対忘れられない超強力なイントロのマイナー調ベースリフ、疾走感溢れ激しくグルーヴするサンバのリズム、テーマ終了後のセカンドライン、緩急をつけた劇的なリズムチェンジ。全てが文句のつけようのない完璧な出来映えとなっている。

G

Garôta De Ipanema

いわずと知れたボッサスタンダード。邦題「イパネマの娘」。Stan Getz(スタン・ゲッツ)とJoão Gilberto(ジョアン・ジルベルト)が共演した『Getz/Gilberto』というアルバムでJoão Gilbertoの奥さんだったAstrud Gilberto(アストラッド・ジルベルト)が歌った録音が全世界におけるボサノバブームを巻き起こした。ボッサノヴァといえばイパネマ、イパネマといえばボッサノヴァ。ジャズのライブに行っても演奏を耳にする頻度はきわめて高く、もはやジャズスタンダードといっても差し支えはないであろう有名曲。ジャズサンバにおいても取り上げられることの極めて多い最重要レパートリー。

Gente

Marcos Valle作曲によるボッサスタンダード。

I

Impulso

盲目のピアニスト、Manfredo Fest(マンフレッド・フェスト)が作曲したオリジナルジャズサンバ。凝ったアレンジ、アンサンブルの一体感を重視したManfredoの本領発揮といった好例で、要所要所にキメが設けられた緻密な楽曲となっている。この曲が収録されたサードアルバム(通称「マンフレッドの黒いやつ」)における疾走感あふれるグルーヴ、随所に施されたキメ/ユニゾン、熱い即興演奏、親しみやすいテーマのメロディと豊かな音色といったものに魅了された瞬間から本間氏のジャズサンバ専門プロジェクトが始まった。但し、ジャズ・サンビスタスがそれを忠実に再現できると考えるのは早計というものである。

Influência Do Jazz

Carlos Lyra(カルロス・リラ)の作曲。邦題は「ジャズの影響」。字面だけで判断すればジャズ讃歌か何かのように思えるが、実はサンバに対するジャズの悪影響を歌っている。曰く、ノリが違うとのこと。ただそのわりには、オリジナル録音のバッキングはTamba Trio(タンバ・トリオ)によるジャズサンバ/ボッサジャズスタイルだったりするし、その歌詞の内容に関わらず、Leny Andrade(レニー・アンドラージ)、Luiz Chaves(ルイス・シャヴィス)等ジャズ系ミュージシャンによってよく取り上げるというなんとも不思議な立場の楽曲。

Insensatez

‘How Insentive’という英題の方が有名かも。Tom Jobim作曲。

Inútil Paisagen

Tom Jobim(トン・ジョビン=アントニオ・カルロス・ジョビン)とAloysio De Oliveira(アロイジオ・ヂ・オリベイラ)によるミディアムボッサ。邦題は「無意味な風景」。Wander Sá(ワンダー・サー)によるヴォーカルものが代表的演奏か。けだるい雰囲気を漂わすあたりは「Corcovado」に通じる曲調であるが、ジャズサンバではこちらの方が取り上げられる頻度が圧倒的に高い。トニックから半音で下降するベースラインと絶妙な場所に配置されるサブドミナントマイナーで構成される胸キュンなAメロが美味。北朝鮮の国営放送風に曲名をコールしたらメンバーの失笑をかったのは他ならぬ本間氏である。

L

Lamento No Morro

ブラジルの偉大な作曲家、Antonio Carlos Jobim(アントニオ・カルロス・ジョビン)がアメリカのCTI というレーベルに残したとんでもない大名盤、『Wave』に収録されているボッサナンバー。同曲ではアルバム中唯一、Jobimが歌を披露している。ジャズサンバ界隈ではサックス奏者、Paulo Moura(パウロ・モウラ)がこの曲を取り上げている。映画『黒いオルフェ』にも使われている。

M

Manhã De Carnival

邦題は「カーニバルの朝」。映画『黒いオルフェ』の挿入歌。

Mar, Amor

ボッサスタンダード海シリーズ。Sansa TrioにおけるAirto Mereiraのバッキングがとにかく神がかっている。

Maria Moita

マイナージャズサンバ。Bossa Jazz Trioはリズムチェンジを多用し凝ったアレンジを聴かせる。

Menino Das Laranjas

邦題は「オレンジの少年」。買っておくれよ/オレンジを/おじさん/一個オマケにつけるからさ。モーホでの厳しい生活を歌った社会派の歌詞。ブラジルの名歌手・エリス・レジーナの『Samba, Eu Canto Assim』での熱唱が特に有名で、初期エリスの代表曲のひとつに数えられる。(バックはRio 65 Trio。)ジャズサンバものではJongo Trio(ジョンゴ・トリオ)、Sambalanço Trio(サンバランソ・トリオ)を従えたLennie Dale(レニー・デイル)、Manfredo Fest Trio(マンフレッド・フェスト・トリオ)、Tempo Trio(テンポ・トリオ)が録音を残していて、いずれも劣らぬ熱演となっている。特にManfredo Fest Trioによる録音は、本間氏のジャズサンバ好きを決定づけたきっかけとして、やはり一度はライヴで演奏をしたいと思っていた一曲であったとのこと。

Minha Namorada

美しい旋律をもったバラード。激しいのがお好きなジャズサンビスタも素直にバラードで演奏する。名演はやはりNara Leãoの『Dez Anos Depois』だろうか。邦題「私の恋人」。

Minha Saudade

邦題は「私の思い出」。João Donato(ジョアン・ドナート)の作曲。Aメロはトニックから長3度まで全音で上行していきⅢ-Ⅵ-Ⅱ-Ⅴ。Bメロはほぼ循環系のコード進行でかなりジャズ的。Cannonball Adderleyの『Cannonball’s Bossa Nova』に収録された演奏が有名。

Mojave

ブラジルの偉大な作曲家、Antonio Carlos Jobim(アントニオ・カルロス・ジョビン)がアメリカのCTI というレーベルに残したとんでもない大名盤、『Wave』に収録されているマイナー調のボッサワルツ。アメリカ南西部に広がるモハーヴェ砂漠にインスパイヤされて作曲したとされる。この『Wave』、発表があと数年早かったらここに収録されている楽曲群は多くのジャズサンバミュージシャンに取り上げられたであろうことは想像に難くない。ジャズ好きが飛びつかずにはいられない魅力を備えた名曲のオンパレードである。

Muito À Vontade

ブラジルきってのジャズマニア、João Donato(ジョアン・ドナート)先生がおつくりになったオリジナルナンバー。先生ご自身も同曲をアルバムタイトルにした作品を残されておりますが、ジャズサンバではLe Trio Camara(ル・トリオ・カマラ)、トロンボーン奏者、Raulzinho(ハウルジーニョ)もこの曲を演奏している。メロディの出だしがAntonio Carlos Jobim(アントニオ・カルロス・ジョビン)作曲の「Outra Vez」と似ていると思ったのは本間氏のうっかり勘違いであったらしい。女性ヴォーカリスト、Doris Monteiro(ドリス・モンテイロ)のライナーによれば「心から喜んで」なる邦題がついている。

N

Nanã

多くのジャズサンビスタに取り上げられているジャズサンバスタンダード。ブルースフィーリング全快のコッテコテな演奏から、Mário Castro Neves & Samba S.A.(マリオ・カストロ・ネヴィス&サンバ S.A.)で聞けるようなスタイリッシュなツインヴォーカルものまで、実に様々なアレンジに対応できる懐深さをもった楽曲である。鬼才Moacir Santos(モアシル・サントス)によるオリジナルバージョン(『Coisas』に収録)では「N˚5」という曲名になっていて、バス・トロンボーンを始めとした低音ホーン隊が暗躍。鈍重で奇妙で、どこか間の抜けた怪演である。

Noa…Noa

若かりし日のSergio Mendes(セルジオ・メンデス)のペンによるオリジナルナンバー。人一倍ジャズ志向が強かった当時の彼らしく、捻りに捻ったコード進行が即興演奏魂を刺激する楽曲である。作曲者以外ではJoão Donato(ジョアン・ドナート)、Milton Banana Trio(ミウトン・バナナ・トリオ)、Le Trio Camara(ル・トリオ・カマラ)といった腕に覚えのある実力派しか録音を残していないところからもこの曲の難易度の高さを伺い知ることができるかもしれない。

Nós E O Mar

ボッサスタンダード「海シリーズ」の一曲。邦題は「二人と海」。ボサノヴァ界随一の海人Roberto Menescal(ホベルト・メネスカル)と伊達男Ronaldo Bôscori(ホナルド・ボースコリ)という、ブラジルを代表する遊び人作曲チームが手がけた美しい楽曲である。作者Roberto Menescalの代表作たるエレンコ盤には、米国クールジャズの大家、George Shearing五重奏団にインスパイヤされた室内楽的アレンジが施されていて◎。若き日のEumir Deodato(エウミール・デオダート)によるイイ仕事。

O

O Amor Em Paz

邦題「平和な愛」。英題は’Once I Loved’。個人的には’O Grande Amor’とごっちゃになります。

O Barquinho

邦題「小舟」。Elis Reginaの歌ものが有名。’Little Boat’という英題でReal Book(ジャズのスタンダードブック)にも載っており同書では4/4でリズム表記されているが、Bossa Nova Songbookなどブラジル系のスタ本では通常2/4で表記される。ジャズとボサノヴァ/サンバのリズムの取り方が見て取れよう。

O Grande Amor

ジャズでも演奏されるスタンダードナンバー。繰り返しになりますが個人的には’O Amor Em Paz’とごっちゃになります。

O Morro Não Tem Vez

邦題は「モーホには出番がない」。モーホとは「丘」を意味するが、貧しい人たちが暮らす地区という意味合いも含まれる。映画、『黒いオルフェ』の舞台となったあの赤茶けた丘に広がるスラム街のイメージ。そのモーホに住む人たちには出番がないという。カーニヴァルのことだろうか、あるいは人生のことだろうか。でももしもモーホに出番がきたら、町中が歌ってしまうよという歌詞。モーホ(スラム)の不遇を歌った哀歌で、曲調も終始一貫して短調が続く。Bメロで登場するブルースフィーリング溢れるキメがやたらとカッコいい。

O Pato

「アヒルくんがサンバを練習するよ。クエィンクエィンクエィンクエィン」的な歌詞。米国のテナーサックス奏者Stan GetzとギタリストCharlie Byrdによる演奏で有名。歌ものでもLeny Andrade(レニー・アンドラーヂ)を始めとしてジャズオリエンテッドなアレンジで取り上げられている。

Odeon

19世紀の中頃に、ポルカやワルツといったヨーロッパ音楽のメロディ&ハーモニーとアフリカの複雑なリズムが融合して生まれたブラジル独自のインストゥルメンタル音楽、ショーロ。「Odeon」はショーロでもとりわけ有名なバンドリン奏者、Jacob Do Bandrim(ジャコー・ド・バンドリン)の名演で知られる楽曲で、作曲はErnesto Nazareth(エルネスト・ナザレ)というショーロの作曲家である。ピアニスト、J Júnior(ジョタ・ジュニール?)率いる謎のカルトトリオ、Bwana Trio(ブワナ・トリオ)はその多彩なレパートリーの中でこの格調高いショーロの歌曲を取り上げている。

Olha Pro Céu

Antonio Carlos Jobim(アントニオ・カルロス・ジョビン)がアメリカのCTI レーベルに残した大名盤『Wave』(邦題『波』)に収録されているミディアムボッサ。英題は「Look To The Sky」。「Out Of Nowhere」「East Of The Sun」「Vivo Sonhando」系のコード進行と調性(#ひとつ)で非常にリラックスした曲想。

Olhou Pra Mim

Manfredo Fest初リーダー作でのお洒落なアレンジが秀逸。

Ora Bolas

Ian Guest(イアン・ゲスト)、Zilmar De Araujo(ジウマール・ヂ・アラウージョ)という他に聞いたこともない作曲チームによる佳作。1960年代の新主流派ジャズを髣髴とさせるアフロ志向のイントロからはじまり、うねるようなテーマのメロディライン、ブレイクを多用したタイトなアレンジ、そしてハードな演奏と、どこからどうみてもジャズヲタクが作ったとしかいいようのない徹底ぶり。数あるジャズサンバの楽曲群にあっても一際ジャズ色の強いナンバーとなっている。全体的な調性やBメロのコード進行からすると、ジャズの名曲「A Night In Tunisia(チュニジアの夜)」から着想を得たようにも思われる。

Outra Vez

メロディの出だしが’Muito A Vontade’と似ている(ような気がする)。Nara Leãoが情感豊かに歌い上げる。ジャズサンバではManfredo Festが初リーダー作で取り上げており、こちらはお洒落なアレンジで聴かせている。

P

Prá Machucar Meu Coração

Prá Que Chorar

邦題「なぜ泣くの」。ギタリスト、Baden Powell(バーデン・パウエル)による作曲。作詞はVinicius De Moraes(ヴィニシウス・ヂ・モラエス)。入院中に隣の病室の人が亡くなり、すすり泣きが聞こえる夜に書き上げたという歌詞がなんといっても素晴らしい。「なぜ泣くの?夜が明けたら新しい愛が待っているというのに」。Claudette Soares(クラウヂッチ・ソアレス)のデビューアルバム冒頭を飾る名曲。慈愛に満ちた歌声は必聴。インストではLuiz Chaves(ルイス・チャヴェス)のビックコンボによる演奏が元気イッパイ。2009年に公開され先日DVDも発売された『ヴィニシウス』というドキュメント映画では、サンバの若大将、ゼカ・パゴヂーニョがフェイクしまくりでこの曲を歌う。大変素晴らしい演奏なのだが本間氏にはもはや彼が安岡力也にしか見えないという。

Preciso Aprender A Ser Só

ブラジルが誇るメロディメーカー、Marcos Valle(マルコス・ヴァーリ)が作曲したボッサバラード。邦題は「一人でいることを学ばなくちゃ」。多くのジャズサンバコンボが取り上げている有名曲であるわりには、かなり特殊な小節数でAメロは普通の感覚からすると1小節少ない半面、逆にBメロが2小節多く、結局、全体的には1小節多い。でもメロディの流れとしてはいたって自然に聞こえてしまうあたりが実に心憎い。メロディを支えるコード進行もかなりひねくれていて、そういった点がジャズサンバ奏者たちを刺激したように思われる。

Primavera

日本語に訳すと「春」。「ボサノヴァ」という言葉の生みの親でもあるCarlos Lyra(カルロス・リラ)とVinicius De Moraes(ヴィニシウス・ヂ・モラエス)の共作によるボッサバラード屈指の名曲であり、美しい旋律は一度聴いたら忘れられない。即興演奏をするミュージシャンとしては、同じようなコード進行が延々と続くのでなかなか難しいものがある。Sergio Mendes(セルジオ・メンデス)の『Bossa Nova York』に収録されたバージョン(フルートはジャズフルート奏者Hubert Laws)が胸を打つ。Primo Trioは意表をついてミディアムテンポで演奏。されどなかなかの味わいがある。

Q

Quem É Homme Não Chora

Manfredo Fest Trioが火の吹くような熱演を繰り広げたマイナー調のジャズサンバ。Sambalanço Trioを従えたLennie Daleも演奏を残している。邦題は「男は泣くな」。

Quintessência

純度100%のジャズサンバスタンダード。J.T. Meirelles、Edison Machado、Os Cobrasといったハードコアなジャズサンビスタがこぞって演奏している。ホーン入りのセッション向き。

R

Rapaz De Bem

ボサノヴァの開祖とも称される、Jonhnny Alf(ジョニー・アルフ)が作曲したミディアム・ボッサ。メロディをフェイクしまくるアクの強いオリジナル録音よりもNara Leão(ナラ・レオン)が『Dez Anos Depois』に吹き込んだ軽やかなバージョンの方が有名。邦題は「真面目な青年」。「お金が人の価値を決めるものではないから/僕の持ってるのは、なんとかやってゆけるだけのお金/それならどうして僕が働きたくなるだろう」といった歌詞。男性ヴォーカリスト、Wilson Simonal(ウィウソン・シモーナル)はジャズサンバの伴奏で小粋に歌う。

Razão De Viver

美バラード。


Resolução

作曲者Edu LoboのオリジナルヴァージョンはTamba Trioがバッキングを務める。Quarteto En Cyの1stはBossa Três。Elis ReginaはRio 65 Trioをバックに『Samba, Eu Canto Assim』で取り上げている他、純粋なジャズサンバものではBossa Jazz Trioの演奏が秀逸。

Rio

ボサノヴァ界随一の海人Roberto Menescal(ホベルト・メネスカル)と伊達男Ronaldo Bôscori(ホナルド・ボースコリ)という、ブラジルを代表する遊び人作曲チームが手がけた楽曲。Roberto Menescalの代表作たるエレンコ盤には、米国クールジャズの大家、George Shearing五重奏団にインスパイヤされた室内楽的アレンジが施されていて◎。若き日のEumir Deodato(エウミール・デオダート)によるイイ仕事。ちなみにリオデジャネイロの訛りでは単語冒頭の「R」は「ハ行」で発音するため、「ヒオ」になるそうです。

Reza

Edu Lobo(エドゥ・ロボ)作曲のジャズサンバスタンダード。邦題は「祈り」。十人十色のアレンジが聴き所。Manfredo Fest Trioの演奏では終始転調を繰り返す。Bossa Jazz Trioはミドルテンポでストレートにソロ後、テーマに戻る前にブルージーなヴァンプを挟む。因みに何故かアメリカ人ジャズドラマーElvin Jonesも『Puttin’ It Together』で取り上げている。こちらはゴリゴリの新主流派ジャズ。

S

Sabe Você

Carlos Lyra(カルロス・リラ)とVinicius De Moraes(ヴィニシウス・ヂ・モラエス)によって作曲された美しいバラード。このふたりによる共作は「Minha Namorada」、「Primavera」、「Você E Eu」など名曲が目白押し。ジャズサンバでこの曲が取り上げられることは稀であるが、ピアニストLuiz Carlos Vinhas(ルイス・カルロス・ヴィーニャス)は、Bossa Três(ボッサ・トレス)時代にも、自身のソロライヴアルバムでも演奏を残しており、お気に入りの曲であったように思われる。現代における熱烈なジャズサンバ信奉者、David Feldman(ダヴィヂ・フェウドマン)はコンテンポラリージャズの語法でもってこの曲に新たな解釈を与えている。

Samba De Uma Nota Só

英題「One Note Samba」の方が馴染み深いかもしれないボッサスタンダード。「ここにご紹介のこのサンバはひとつの音だけで出来ています。他の音も入ってはきますが、土台はひとつの音です」という曲の構造を説明した歌詞。米国テナー奏者Stan Getz(スタン・ゲッツ)のライヴ盤『Getz Au Go Go』でのAstrud Gilberto(アストラッド・ジウベルト)のヴォーカルが印象的。Gary Burton(ゲイリー・バートン)のヴィブラホンが一層の清涼感を与える。但し、ジャズサンビスタスの演奏に「清涼感」の「せ」の字もないことはもはや自明の理。あらかじめご了承ください。

Samba De Verão

英題「Summer Samba」もしくは「So Nice」の方が馴染み深いMarcos Valle(マルコス・ヴァーリ)作曲によるボッサスタンダード。ジャズサンバにおいてもよく取り上げられ、「イパネマの娘」と双璧をなす最重要曲であるが、イパネマと異なり、ジャズ・ミュージシャンライブで演奏することは稀である。ミディアムテンポからアップテンポまで様々なアレンジに対応できる懐の深さがあるように思われる。3~5小説目にかけてのIV#m-VII7-IImというイレギュラーな進行をどう対処するかがインプロ上のキモ?

Samba Do Avlão

Tom Jobim(トン・ジョビン=アントニオ・カルロス・ジョビン)作曲のボッサスタンダード。邦題は「ジェット機のサンバ」。ジェット機の窓の下に広がるリオデジャネイロへの愛情に満ちた讃歌である。イントロの音階から察するに、中国帰りの便だったのではなかろうかという専らの噂。海、砂浜、丘の上のキリスト像などの憧憬を歌いつつ、「このサンバはリオ、お前のために作ったのさ」とラヴコールを送る。こういったブラジル人/カリオカの自分達の町に対する愛情は、なんだかちょっぴり羨ましい。東京で言うと東京タワーとか浅草寺の雷門にラヴコールを送るような感覚だろうか。

Samba Em Blue

ジャズサックス奏者Sonny Rollinsによるブルース’Sonnymoon For Two’であるが、何故かジャズサンビスタによく演奏される。Rio 65 Trioの演奏はブラジリアンハードバップ。

Samba Pro Pedrinho

ジャズサンバを代表するピアノトリオのひとつ、Sambalanço Trio(サンバランソ・トリオ)。代表作として挙げられるのはキラーチューン「Samblues」を収録したファーストが圧倒的に多いものの、この3作目が一番好きという声も決して少なくない。その人気に一役買っているのが冒頭を飾るこの曲。和訳すれば「ペドリーニョのためのサンバ」といったところであろうか。作曲はWalter Santos(ワルテル・サントス)とTeresa Sousa(テレーザ・ソウザ)夫妻。ピアニストのPedrinho Mattar(ペドリーニョ・マタール)に捧げられた。軽快なミディアムテンポと、定型的なスタイルに囚われることのないリズム隊の自由度の高い演奏はジャズサンバという音楽の魅力の一端を伝えることのできる好例と言えよう。

Samba Novo

Durval Ferreira(ドゥルヴァル・フェレイラ)とNewton Chaves(ネウトン・シャヴィス)が作曲したハードコアなジャズサンバスタンダード。Milton Banana Trio(ミウトン・バナナ・トリオ)、Tamba Trio(タンバ・トリオ)、Conjunto Som 4(コンジュント・ソン・クアトロ)、Geraldo Vespar(ジェラウド・ヴェスパール)など重要なジャズサンバコンボがこぞって演奏を残しているが、わけてもSambrasa Trio(サンブラーザ・トリオ)とLe Trio Camara(ル・トリオ・カマラ)の録音が双璧といえるだろう。

Samblues

後にElis Regina(エリス・レジーナ)の旦那さんとなるピアニスト、César Camargo Mariano(セザール・カマルゴ・マリアーノ)の代表曲にして、ジャズサンバでも特に知名度の高い楽曲。サンバランソ・トリオのファーストアルバムは数あるジャズサンバの中でもリイシューされる頻度が極めて高い人気盤。Sambalanço Trio(サンバランソ・トリオ)をはじめ、オクテート、Som Três(ソン・トレス)と、当時のリーダー作では必ずといっていいほど録音を残している。この曲や「Fim De Semana Em Eldrado」といったキラーチューンが1990年代のクラブシーンで再評価されたことが引き金となり、ジャズサンバリバイバルが進んだことは間違いない。

Samblues

‘Samblues’は同名で楽曲が存在して、こちらはメジャー感漂う爽やかな雰囲気。コード進行の出だしが’Confirmation’っぽい。Milton Banana Trioが録音を残している。

Sambou, Sambou

ブラジルきってのジャズマニア、João Donato(ジョアン・ドナート)先生が作曲されたオリジナルナンバー。ジャズサンバではMilton Banana(ミウトン・バナナ)のトリオやGeraldo Vespar(ジェラウド・ヴェスパール)、珍しいところでは女性シンガー、Doris Monteiro(ドリス・モンテイロ)がオルガニストのWalter Wanderley(ワルター・ワンダレー)と組んで歌ものとして録音を残
している。この曲をジャズサンビスタスが初演したライヴではついつい興に乗ってしまい、ベースとドラムが共謀して後ろからやんややんやと煽り立てていたら、川田氏をして「高齢者虐待」と揶揄せしめたという伝説の一曲。

Se É Tarde Me Perdoa

Carlos Lyra(カルロス・リラ)とRonaldo Bôscoli(ホナルド・ボースコリ)の共作。英題は「Forgive Me If I’m Late」、日本語訳すると「遅かったら許してね」といったところだろうか。胸キュン(死語)のメロディとコード進行を有する佳作で、米国のジャズミュージシャン、Quincy Jones(クインシー・ジョーンズ)の『Big Band Bossa Nova』ではひとつのハイライトとして記憶される。ちなみに『Big Band Bossa Nova』は1998年にフランスで開催されたサッカーワールドカップのテーマ曲として使われた有名な「Soul Bossa Nova」も収録されている。

Só Danço Samba

『Getz/Gilberto』に収録されている人気曲。ここで聴けるイントロはどうやらお約束らしい。例の如くジャズサンバではあまり演奏されないがSergio Mendesが『Bossa Nova York』で録音している。

Só Por Amor

Só Tinha De Ser Com Você

Tom Jobim(トン・ジョビン=アントニオ・カルロス・ジョビン)とAloysio De Oliveira(アロイジオ・ヂ・オリベイラ)によるボサノヴァスタンダード。邦題は「君なしではいられない」。ブラジルの歌姫Elis Regina(エリス・レジーナ)と作曲者であるJobimの共作『Elis & Tom』に収録されたバージョンが代表的。ジャズサンバでは、Sergio Mendes(セルジオ・メンデス)、Zimbo Trio(ジンボ・トリオ)、Milton Banana Trio(ミウトン・バナナ・トリオ)、Embalo Trio(エンバーロ・トリオ)等が録音を残しており、くつろいだ曲調で作品のアクセントの役割を果たしている。

Solo

純度100%のジャズサンバスタンダード。J.T. Meirelles、Edison Machadoといったハードコアなジャズサンビスタが演奏している。

Sou Sem Paz

邦題は「心やすらかならぬ僕」。Zimbo Trio(ジンボ・トリオ)のHamilton(アミウトン)、Bossa Jazz Trio(ボッサ・ジャズ・トリオ)のAmilson(アミウソン)を弟にもつAdylson Godoy(アジウソン・ゴドイ)が作曲したジャズサンバチューン。弟たちが兄の楽曲を録音したのは当然として、それ以外Airto Moreira(アイルト・モレイラ)を擁した第2期Sansa Trio(サンサ・トリオ)、そしてブラジル最高のヴォーカリスト、Elis Regina(エリス・レジーナ)が『Samba, Eu Canto Assim』というアルバムでRio 65 Trio(リオ・セセンタ・イ・シンコ・トリオ)をバックに録音を残している。ということでジャズサンバの名門トリオがこぞって取り上げているという、まさに知る人ぞ知る名曲であったりするのだが、その「知る人」って一体誰なのさ?

T

Telefone

Astrud GilbertoがStan Getzと共演したライブ盤『Getz Au Go Go』の雰囲気がとても良くて一聴の価値アリ。演奏が終わった後のウフフがなんだか可愛い。

Tem Dó

Ana Lúcia(アナ・ルシア)、Elis Regina(エリス・レジーナ)が歌っている。Rio 65 Trio(ヒオ・セセンタ・イ・シンコ・トリオ)はブレイク部分にSérgio Barroso(セルジオ・バホーゾ)のベースをフューチャーしたアレンジで熱演。

Tema 3

Sambalanço Trio(サンバランソ・トリオ)のピアニスト、César Camargo Mariano(セザール・カマルゴ・マリアーノ)がJongo Trio(ジョンゴ・トリオ)のベース奏者Saba(サバー)&ドラムToninho(トニーニョ)と新たに結成したSom Três(ソン・トレス)の1stに収録されたMarianoのオリジナル。Sambalanço Trio時代の名曲「Samblues」に負けず劣らずのハードなジャズサンバとなっている。ちなみに翌年にはその名もズバリ、Tema Três(テーマ・トレス)というジャズサンバトリオがデビューしており、同名の曲を録音しているが、この曲とは別物である。

Tensão

珍しく異常なテンションで演奏している。に収録。
ジャズサンバ界随一のアクレッシヴなベース奏者、Humberto Cleyber(ウンベルト・クライベール)によって作曲されたハードなジャズサンバチューン。テンションというタイトル通り、切迫した雰囲気をもったメロディライン。短調を主体としたAメロと長調に転調するBメロという曲の構造はSambalanço Trio(サンバランソ・トリオ)の代表曲「Samblues」を髣髴とさせる。Sambalanço Trioの3作目『Reencontro Com Sambalanço Trio』の他、やはりHumberto Cleyberがベースを務めたSambossa 5(サンボッサ・シンコ)という管楽器入りのクインテット(五重奏団)でも演奏が残されている。

Terra De Ninguém

Triste

繊細なメロディをもつボッサスタンダード。Antonio Carlos Jobimの『Wave』に収録。但し初出が遅いためジャズサンバでは演奏されず。

Tristeza

みんなが大好きなボッサスタンダード。Sergio Mendes & Brasil ’66、Elis Regina、Astrud Gilbertoなどなど、名演多数。最後はみんなで大合唱。ラララーラー

Tristeza De Nós Dois

邦題「ふたりの悲しみ」。

U

Upa, Neguinho

ブラジルの歌姫、Elis Regina(エリス・レジーナ)のヴォーカルバージョンがあまりにも有名。その印象が強烈過ぎるからか、それ以外の演奏は少なく、特にジャズサンバシーンではLe Trio Camara(ル・トリオ・カマラ)、Rio 65 Trio(ヒオ・セセンタ・イ・シンコ・トリオ)が録音を残すのみである。Edu Lobo(エドゥ・ロボ)による作曲。

V

Vivo Sanhando

英題は’Dreamer’。シンコペーションの効いた同音の繰り返しと長三度のインターバルのみで構成されたモチーフが印象的。冒頭4小節トニックコードが続いた後、トニックコードからⅢm→Ⅵmへ。その後サブドミナント(Ⅱm)からサブドミナントマイナー(Ⅳm)へと進行していくくだりはジャズスタンダード’East Of The Sun’を髣髴とさせる。『Getz/Gilberto』の演奏が有名で、Bossa Nova Songbookには同バージョンのイントロが掲載されている。

Você

邦題は「あなた」。Elis Reginaがあちこちで録音している。

Você E Eu

Carlos LyraとVinicius De Moraesによる名曲中の名曲。

W

Wave

ジャズのセッションやライヴでも演奏されるスタンダード。(敢えてボッサスタンダードとは書きません。)メジャーのトニックに続く長3度下のディミニッシュコードがドラマチックな効果を生んでいる。初出が遅いためジャズサンバではさほど演奏されず。

参考リンク

ジャズサンバ専門ピアノトリオ ジャズサンビスタス 東久留米の小さな音楽教室 ホンマジャズスクール Tシャツデザインはじめました。 阿房ジャズブランド
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    • 2月24日、3月10日、24日のいずれも金曜日19時から22時半まで花小金井オリーブにてジャズのジャムセッションです。管楽器、ピアノ、ベースの参加者少なめです。是非ご来場下さいませ!
    • ドラムとベースでいかに上質なジャズサンバのグルーヴを作り出すかが時間を割くべき今後の課題であります。
    • RT : 2017年最初のライブ、無事に終了いたしました。ご来場下さいました皆様、誠にありがとうございました! https://t.co/O5dReasp0H
    • 本日はJazz Sambistas の本番前日リハーサルでした。新しく取り組む曲も多くなかなかバラエティに富んだセットリストになったように思います。吉祥寺Strings にて1月28日(土)13時から。ご来場お待ちしております! https://t.co/hxvYjdaeay
    • Jazz Sambistas 新春ライブ In 吉祥寺 Strings、いよいよ明後日となりました!昼の13時からと14時15分からの2セットです。曲解説作らなくては!

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