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NOTES

Sambalanço Trio / Reencontro Com Sambalanço Trio

review:

Sambalanço Trio(サンバランソ・トリオ)が1965年に発表した3作目。本作が録音される以前にバンドはピアニストCésar Camargo Mariano(セーザル・カマルゴ・マリアーノ)のSom Três(ソン・トレス)と、Humberto Clayber(ウンベルト・クライベール)&Airto Moreira(アイルト・モレイラ)のSambrasa Trio(サンブラーザ・トリオ)に分裂していましたが前の2作の人気から再会セッションが組まれたというのが定説となっています※1。多くのジャズサンバコンボが1枚かせいぜい2枚の録音で終わったことを考えると、再会セッションが組まれるというのは当時としても人気のあったバンドであった証左になりますね。トリオ名義では本作を含めて全部で3枚のアルバムを残している他、米国人シンガー/振り付け師Lennie Dale(レニー・デイル)やトロンボーン奏者 Raul De Souza(ハウル・ヂ・ソウザ:ハウルジーニョ)の伴奏も務めています。

収録曲は、メンバーのオリジナルが1曲ずつ(César Camargo Mariano は当時の奥さんMarisa Gata Mansa(マリーザ・ガタ・マンサ)との共作)に、共作名義で、Walter Santos(ヴァルテル・サントス)とTereza Souza(テレーザ・ソウザ)夫妻、Baden Powell(バーデン・パウエル)とVinicius De Moraes(ヴィニシウス・ヂ・モラエス)、Marcos Valle(マルコス・ヴァーリ)とLuiz Fernando Freire(ルイス・フェルナンド・フレイリ)、Eumir Deodato(エウミール・デオダート)とPaulo Sérgio Valle(パウロ・セルジオ・ヴァーリ)、そしてSérgio Augusto(セルジオ・アウグスト)とLuiz Fernando Freireによる楽曲がそれぞれ1曲ずつ。この他にAry Barroso(アリ・バホーゾ)、Oliver Nelson(オリヴァー・ネルソン)が単独で作曲した楽曲とメドレーを加え、全11曲29分強。

アルバムのオープニングは‘Samba Prô Pedrinho’。この曲はWalter Santos とTereza Souza 夫妻がピアニストのPedrinho Mattar のために作った楽曲でジャズでいうところの「リズムチェンジ」っぽいコード進行を持っています。ピアノソロ後、Aメロ16小節でドラムとのソロ交換、Bメロでベースソロをした後、テーマに戻るというコンパクトな演奏です。Airto Moreira が叩き出す強力なサンバドラミングから始まる‘Deixa’ はBaden Powell とVinicius De Moraes による共作曲。テーマのメロディ自体が長い尺なので、ピアノが半コーラスだけソロをとりテーマに戻ります。‘Lenda’ はMarcos Valle がLuiz Fernando Freire と共作したミディアムスローナンバー。バラードに近いテンポといえど、ベースとドラムのよく動く伴奏により甘さが程よく抑えられた表現になっています。‘Tensão’ はHumberto Clayber が作曲したオリジナルのジャズサンバ。この曲は作曲者が同じくメンバーとして参加しているSombossa 5(サンボッサ・シンコ)でも録音が残されています。ピアノソロ後はベース主体に細かいソロ回しをして戻りのテーマへ。2分にも満たない演奏時間ですが、テンションはすこぶる高い内容となっています。‘Razão De Viver’ はEumir Deodato がPaulo Sérgio Valle と組んで作曲した美しいバラードナンバー。’Biãozinho’ などこの時期のDeodato は数こそ少ないですがいい曲を書いていますね。‘Pra Machucar Meu Coração’ はAry Barrosoによるボッサスタンダード。のんびりとした曲想の楽曲で、前曲と似たスローテンポの演奏が続きます。いわゆるボサノヴァをピアノトリオでリリカルに演奏するとこういう感じになりそうな模範的演奏になっています。

レコードでいうところのB面冒頭は、César Camargo Mariano のオリジナルでありこのトリオの代表曲でもある‘Samblues’で始まりますが、この度は前2作で取り上げてきた曲目を繋げたメドレーになっています。1stからは’Sambinha’、’O Amor Que Acabou’、’Pra Que Chorar’と’O Morro Não Tem Vez’。2ndから’Nanã’ と’Roda de Samba’ が再演されています。’Roda de Samba’ の後に再び’Samblues’ のメロディを弾いてそのままヴァンプに突入してフェイドアウト。続く‘Deixa Pra Lá’ はSérgio Augusto とLuiz Fernando Freire の共作曲。女性ヴォーカリストClauditte Soares(クラウヂッチ・ソアレス)の歌で有名なボサノヴァのスタンダードナンバーで、軽快なジャズサンバを聴かせてくれます。‘Só… Pela Noite’ はドラマーAirton Moreira のペンによる3拍子のマイナーブルース。ブルースのラスト4小節が倍の尺に拡張された16小節の変形ブルース形式です。ピアノソロの後にドラムの単独ソロが続き再びテーマに戻ります。米国のテナーサックス奏者 Oliver Nelson によって作曲された‘Step Right Up’ はコミカルでどこかカントリーっぽい曲調の楽曲。テーマメロディの後にピアノとベースのユニゾンフレーズを挟み、短くピアノソロをとった後すぐに戻りのテーマ。1分半弱の簡潔な演奏。アルバムの最後を締めくくるのは、‘Manhã De Nós Dois’。César Camargo Mariano とMarisa Gata Mansa の共作名義によるワルツです。ちょっと気怠い雰囲気が漂う佳曲です。

聴く側がSambalanço Trio に求めがちな傾向として、三者が一丸となって’Samblues’ のようなガツガツしたゴリゴリのジャズサンバを展開するような音楽を期待するわけですが、このトリオ(というよりはピアニスト)が求めた音楽は結果としてその期待から大きく乖離しているところが少なからず見受けられるわけですが、この期待との乖離というのがSambalanço Trioというトリオの本質なのかもしれません。このいささか期待が裏切られる感じーーでも全体的にはけっこう満足できてしまうというのが筆者のSambalanço Trio に対する偽らざる印象です。

  • ※1 宮坂不二生監修(2001)『ボサノヴァ・レコード辞典』, ボンバ・レコード, p.251.

tracks:

  1. Samba Prô Pedrinho (2:22)
  2. Deixa (2:25)
  3. Lenda (2:55)
  4. Tensão (1:51)
  5. Razão De Viver (2:39)
  6. Pra Machucar Meu Coração (3:04)
  7. Samblues / Sambinha / O Amor Que Acabou / Nanã / Pra Que Chorar / O Morro Não Tem Vez / Roda De Samba / Samblues (3:58)
  8. Deixa Pra Lá (2:02)
  9. Só… Pela Noite (3:55)
  10. Step Right Up (1:32)
  11. Manhã De Nós Dois (2:55)

member credit:

  • César Camargo Mariano (piano)
  • Humberto Clayber (bass)
  • Airto Moreira (drums)

release year:

1965

label:

Som/Maior

参考リンク

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    • ドラムとベースでいかに上質なジャズサンバのグルーヴを作り出すかが時間を割くべき今後の課題であります。
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